読書感想:『復活!!虹北学園文芸部』


今月は何だか色々あったので、サクッと気楽に読める児童(ジュブナイル)文学にしました。

数年前の日本帰省中に購入してあったものです。

『復活!!虹北学園文芸部』(講談社青い鳥文庫)

はやみね かおる作

 
 

『復活!! 虹北学園文芸部』は『名探偵夢水清志郎事件ノート』のスピンオフ的な位置付け。

『名探偵夢水清志郎事件ノート』は小学生〜中学生の頃に大好きだったシリーズ。

今でも当時購入したものを大切に持っています。

そのシリーズのスピンオフ的なお話が発売になっている、というのを数年前発見して思わず買ってしまった『復活!!虹北学園文芸部』。

以前もちらっと書いたことがあるんですが、最近の青い鳥文庫は表紙や挿絵が漫画っぽいというかラノベっぽくなっていますね。

私が青い鳥文庫の読者世代だった頃は、もっと素朴なイラストや絵本に近いようなタッチが多かったはずなので、この漫画風な絵はちょっとカルチャーショックでした。

時代が変わると色々変わりますね。

『名探偵夢水清志郎事件ノート』では、題名の通り探偵である夢水清志郎が活躍するのですが、話の主人公は中学生の三つ子である、亜衣ちゃん真衣ちゃん美衣ちゃん。

そのうちの亜衣ちゃんは中学の文芸部に所属しており、シリーズ全編を通しほぼ亜衣ちゃんの目線でお話が綴られています。

『復活!!虹北学園文芸部』では、亜衣ちゃん真衣ちゃん美衣ちゃんのいとこ、マインちゃんが主人公。(マインちゃんの方が三つ子よりも年下。)

かつて亜衣ちゃんが所属していた文芸部が廃部になってしまったことから、文芸部を復活させるべくマインちゃんが奮闘するお話です。

『名探偵夢水清志郎事件ノート』は青い鳥文庫ですから、推理小説といえどもちろん子供が安心して読める内容。

残虐な描写などはありません。

でも大人が読むと、

思春期の子供たちが抱える葛藤だとか、

社会の闇的なものだとか、

突き詰めたら割とヘビーな内容になりそうな事柄もほのめかされています。

直接的な怖いシーンはなくとも、推理小説ならではの緊張感のようなものも随所にあります。

(繰り返しになりますが、対象年齢のお子さんが読んでも大丈夫な範囲で、ですのでご安心を。)

今回私が読んだ『復活!! 虹北学園文芸部』は、推理小説ではないこともあって夢水清志郎シリーズよりももっとライトな内容。

青春物語とでも言ったらいいのでしょうか。

大人にはちょっと物足りないかもしれませんが、主人公と同じ年代の方達には響くのだろうと思います。

もちろん大人が読んでも若い人たちを応援したくなったり、自分の夢を今一度振り返って考えたりしたくなります。

ところで『名探偵夢水清志郎事件ノート』の三つ子、亜衣ちゃん真衣ちゃん美衣ちゃんのお父さんは、作中で一太郎父さんと呼ばれているんです。

『復活!! 虹北学園文芸部』のマインちゃんのお父さんは、三四郎父さんだそう。

おそらく、お父さん同士が兄弟なのですよね。

三四郎って三男なのか四男なのか?と思って調べてみたら、

三と四を足して、七男という名付け方があるようです。

さらに、元来の名付け方では長男が太郎で次男が次郎。

ですので、一郎は実は11番目、二郎は12番目なんだとか。

面白いですね。

でも小説内の一太郎父さんと三四郎父さんは、そういった元来の名付け方に則ったわけではなく、もしかして…

ソフトの名前が由来だったり…しませんかね?

若い人はご存知ないかもですが、昔は一太郎というワープロソフトがよく使われていたのですよ。

そして三四郎は表計算ソフト。

それつながりだったりするのかなぁ。

一太郎父さんはエリートでよく働く設定ですし。

あともう一つ気がついたのは、小栗虫太郎についてチラリと言及されていたこと。

作者である、はやみねかおるさんの好みなのでしょうか。

確か夢水清志郎シリーズでも登場していた記憶があります。

話が逸れてしまいましたが、自分が小中学生の時に読んでいたシリーズのスピンオフはとっても懐かしい気分にさせてもらえました。

亜衣ちゃん真衣ちゃん美衣ちゃんが通っていた時代の虹北学園は、大小様々な部や愛好会があったと夢水清志郎シリーズでも何度も触れられていました。

当時主人公と同世代だった私にはそれが何とも羨ましかったなぁ。

私はそれなりにのどかな地方の公立中学に通っていたのですが(田舎ではほとんどが公立中学へ進学します)、当時はやはり部活動は絶対、それも運動部で!という雰囲気満々でした。

文化部の中では吹奏楽部だけが周りの大人たちから「ちゃんと部活やってる」と認められる感じでした。

それが今も昔も私は納得できなくて。

好きなことが運動以外の何かでも、胸を張って打ち込める虹北学園のような学校に通いたかったなぁと当時思っていました。

私が通っていた中学には文芸学部はなかったし、

高校は私立でしたがそこにも文芸部はなかったはず。

文芸部か手芸部に入ってみたかったな〜。

でもこの作品に登場するマインちゃんは

「無いなら自分で作ってみせる!」という気概があるんですよね。

当時の自分にはそんな発想も気概もありませんでした。

ただ憧れるだけ。

今の自分はどうかな?

何かを受け身で待ったり羨んだりするだけじゃなく、

能動的に行動できるような大人にはまだまだなりきれていないかも。

何歳になっても、「自分から動いていく」という思考を持って生きていきたいものです。


Dec 2, 2022

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