読書感想:『The House in the Cerulean Sea』

お久しぶりです、こんにちは。

前回、「縫い物や編み物のブログも徐々に更新していけたら」

なんて話をしていたのに全く更新しないまま10月となってしまいました。

スローなペースではありますが一応縫い物はしています。

読書も相変わらずゆっくりだけど楽しんでいます。

これからの季節は編み物もしたいですし。

引っ越しや愛犬介護のタイミングで一旦お休みしていた、ピアノの練習やデジタルお絵描きの練習もいつか再開したい。(ギターもお休みしてるけど、ギターは残念ながら今後再開しないかもしれないなぁ。)

ゲームもしたい気持ちだけはあるんだけど、エルデンリングは気力も時間も要るのでこちらもあまり手をつけられず。

もみじが亡くなってからブログ含むSNSを更新する気がめっきり失せて、今は見る専門と化してます。

でもとりあえず読書感想だけは続けていこうかな、と。書き留めておかないとのちのち、「あの本読んだことあるけど、どんなだっけ?」ってなってしまうのでね。

今回の読書感想は8月に読んだ本です。


『The House in the Cerulean Sea』 by TJ Klune

邦題『セルリアンブルー 海が見える家』T.J.クルーン 

 
 

ジャンルとしてはファンタジー。

とはいえ魔法使いが派手なイリュージョンを見せる訳でもなく、大きな戦いが描かれているような壮大ファンタジーというわけでもありません。

主人公の成長を描いた、ほっこりするような現代ファンタジーとでもいうのでしょうか。

2020年出版のこの作品は、すでに邦訳もされており邦題は『セルリアンブルー 海が見える家』、著者の日本語表記はT.J.クルーン。(私は英語の原作を読みました。)

邦訳版は文庫本で上下巻に分かれているようです。(英語版は単行本で1冊にまとめられています。)

魔法が使える(もしくは魔法生物などである)子どもたちのための孤児院を運営する魔法青少年担当省で、ケースワーカーとして働くライナスが主役。

この魔法青少年担当省がめちゃくちゃブラックな職場でして。こんなブラックが運営している孤児院なんて絶対子供達にとっても暖かい場所ではないのだろうな…と思ってしまう真っ黒な職場です。

そんな魔法青少年担当省で働くライナスは、孤児たちに対する思いやりや同情こそ持っているものの、仕事はきっちりこなす真面目な独身の中年男性。

どんよりとした天気に包まれた都会で毎日職場と家の往復。同じことの繰り返しが、ある時とある島にある児童保護施設での重大任務を任されたことから、少しずつ変化していきます。

前半、都会で暮らすライナスの様子が描かれる章は今にも雨が降り出しそうな曇り空のようなグレーな印象が強調されています。

そこから島へと舞台が移ると、景色と共にライナスの人生も色づいていきます。その対比が印象的でした。

小説版『ダークソウル』の次に読んだ『セルリアンブルー 海が見える家』。

文字通りダークな『ダークソウル』から一転して、癒されるようなものがいいなぁと想って選んでみました。

結果、とても優しさと暖かさの詰まった一冊でした。

子供達との出会いも、施設長やそこで働く人、街の人との出会いも。誰かを慈しむって素晴らしいことだなぁと。

恋愛的な要素もあるのですが、それもまたすごく良かったです。普段恋愛小説はあまり好まず、映画でもゲームでも恋愛要素は基本なくていい派なのですが、今回は個人的に好みな描かれ方でした。

直接「好き」だとか「あの人素敵!」とか書かれている訳ではないのに、

「ん?あれ?もしかしてこの二人って少しずつ惹かれあっている?」

というのがさりげない描写から読み取れるのがよかったです。

そんなわけで、作品自体は楽しんで読んだのですが…

読み終わって「ネタバレを気にせず色んな人の感想を読める〜!」と調べていたら、実はこのお話のインスピレーションの一つが、カナダの先住民寄宿舎学校だったと知りました。(どこかのインタビューで著者がそう答えていたそうです。)

先住民寄宿舎学校は、カナダの白人社会の文化に強制的に同化させることを目的とし、キリスト教会(主にカトリック)によって運営されていました。子供達は強制的に親から引き離され、先住民としての言葉も文化もアイデンティティも自由も奪われ、学校とは名だけで実質的には収容所のようだったと聞きます。

約100年続いたこの同化政策は1998年まで続きました。まだまだ過去の歴史のことではなく、つい最近まで起こっていたこと。2021年にはカナダの各地の寄宿学校の敷地内で多くの無名の墓が発見され、再度問題提起がなされました。ジェノサイドとして扱われるこの寄宿学校のトラウマは何世代にも渡り、また社会的な人種差別を生み出す原因ともなった、今も続くカナダの暗い歴史です。

このような背景を持つ先住民寄宿舎学校が、作品に登場する孤児院のインスピレーションとなったようです。

史実をそっくり元にしてあるわけではなくインスピレーションということもあり、恥ずかしながら私は読んでいる間、自分でそれに気がつきませんでした。(作品内で触れられている、差別や偏見からくる正当な理由のない恐れなどは、現代社会にも通じる問題だなぁとは思っておりましたが。)

歴史を基にした作品は無数にあるでしょう。

それ自体がダメなことではないと思います。

ただ今回は、先住民寄宿舎学校の問題がまだ「過去の出来事」ではないこと、後書きなどでも先住民寄宿舎学校について一切触れられていないこと、多くのトラウマを生み出したジェノサイドからインスピレーションを得た作品が「心温まるお話」にすり替わっていること、などの点が議論を起こしているようです。

私自身、著者のインタビューを全編見たわけではなくまだリサーチ不足なので、ここで自分の意見を書くのは控えます。英語になりますが他の方がこの問題について触れている投稿や動画がたくさんありますので、そちらを調べてみてください。

Oct 11, 2023

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