読書感想:『Iron Flame』

みなさん、こんにちは。

2024年がやってきましたね。

心が辛くなるような出来事ばかりが起こる新年となってしまいましたが、どうか今年のこれから先が少しでも良いものとなりますように。

皆さんが安心して暮らせる日が早くやってきますように。

いつも通りの日常を送れている私たちはそのことに罪悪感を感じ、必要以上の自粛をしてしまうこともあるかと思います。

でも、

日常の生活に感謝し、ご飯を食べ、笑える時に笑い、

もし何かを頼まれた時にさっと動ける心身の健康を保つことの方がよっぽど大事だ、

という意見を目にしました。

海外に住む私にできることといったら、義援金の寄付やオンラインショッピングなどを通じての経済的支援など。

どちらも微々たるものではありますが、そのためにもちゃんと健康に働き続けられる心身を整えること。

そして心の健康を保つために、自分の日常にあるささやかな幸せを見失わないようにすること。

去年は、悲しみとストレスで悲観的な自分に負けてしまいそうになることが多かったので、今年は小さな幸せや楽しみを見逃さないようにしたいと思っています。


本日の読書感想は2023年中、最後に読み終えた本。

『Iron Flame』 Rebecca Yarros 作。(2023年出版)

 
 

2023年5月に発売となり今年大人気だった、『Fourth Wing』。

その続編が『Iron Flame』 です。

どちらもThe Empyreanシリーズの作品。

このシリーズは全部で5作品となる予定だそうです。

 
 

ここから先、『Fourth Wing』と『Iron Flame』のネタバレがあります。

エンディングに関する重大なネタバレなどは書かないように気をつけますが、あらすじやキャラクターなどについては触れますのでご了承ください。

世界設定や第1作目のあらすじは『Fourth Wing』記事で紹介しています。

今作は前作以上に暴力的なシーンがありますし、直接的な表現も多いので、心配な方はコンテントワーニング(トリガーワーニング)の確認はしたほうがいいかと思います。死やトラウマ、PTSD、戦争についての言及、また性的な描写もあります。


『Iron Flame』は前作『Fourth Wing』のエンディング直後の場面からスタート。

第1作目は、軍学校1年目のヴァイオレットの苦難と挑戦を描いたものでした。

第2作目の時間枠はそれよりも(おそらく)短めで多分半年間くらい?

だと思うのですが、ものすごくいろんなことが起こります。

前作はとてもエンターテイメント性が高く、かなり夢中で楽しんで読めた作品。

だから今作もそうだといいなと期待値が高まっておりました。

結論から言うと、今作もエンタメ性は高く面白かったことは間違いないですが、前作と比べて個人的に「あれ?」と思う点が多く、のめり込み度は低めでした。

まずは、面白いと思った点。

前作と同じく、ドラゴンは私の最も好きな要素でした。

今作では世界設定や歴史が掘り下げられたり、ドラゴンの秘密が少しずつ明かされたりして、そういう部分にはとてもワクワクしました。ここは個人的に、知りたいという欲を掻き立てられる部分です。

ドラゴンは相変わらず毒舌マイペースで、会話のやり取りにクスッとしました。

主人公ヴァイオレットが少しずつ友達を信頼し、心を開いていく様子も良かったと思います。

主人公やヒーローは、「私が」「僕が」と一人で抱え込んでしまいがち。

ヴァイオレットも例外ではなく、いろんなことに対して

「自分一人でやらなきゃ」

「私がなんとかしなきゃ」

「私が失敗してしまったから…」

と良くも悪くも全部を一人で背負いがち。

一人で突っ走ってしまった結果周りを巻き込んでしまうくらいなら、最初から周りを信頼して手を借りた方がうまくいくのにな〜とずっとヤキモキしていました。

今作の途中からやっと少しずつ、本当の意味で友達を信頼して任せる姿を見せてくれて安心しました。

ちょっとピンと来なかった点は以下の通り。

まずは一つ目の恋愛の描かれ方。

このシリーズ、ファンタジー中心で恋愛要素も少しあるというよりは、ロマンタジー(恋愛要素強めもしくは中心なファンタジー)のようです。

なので恋愛に関する話が多くの割合を占めるのですが、600ページを超える作中、主人公2人がずっと同じことを繰り返し言い合いしているのが気になって。

その会話が結構な回数登場するので、お腹いっぱい状態に。そのせいか主人公カップルが前作よりも幼稚な印象となってしまった気がします。

今作もかなり写実的な性的描写があるのですが、個人的にはそれも蛇足に感じてしまったかなぁ。

次に文章や構成、区切り方。

このシリーズ、テレビドラマ化されることが決まっているらしいのですが、その為なのか否か、今作はテレビドラマのエピソードを見ているような構成だった気がします。

話の途中っぽいところでエピソードが終わり、次のエピソードからは全く別の話やシーンに切り替わる、というの欧米ドラマで見かけませんか?ああ言う感じ。

またこの話に戻ってくるのだろうか?と思いつつ読み進めても全然そうならないので、「あの話の内容はあれで終わり?まだ続きがあるの?」と釈然としない部分が所々ありました。

そして今作はスラングが目立った気がします。

これは前作でも指摘している方がいました。前作は個人的にはさほど気にならなかったのですが、今作はちょっと盛り込みすぎ?と私も感じました。

SNSでティーンが使うような類のスラングが今っぽく感じられるのって本当に短い間だけ。

逆にいうとあと数年もすればものすごく「一昔前」っぽい雰囲気を放ってしまうのではないかと思います。

また読んでる最中、文法に「おや?」と思う箇所がいくつか。

最初は、私の英語力の問題で自分が知らないだけでそういう使い方があるのかなとか、あえての文章のスタイルなのかな?と思っていたのですが、

英語ネイティブの方のレビューに何件も同じようなものが見受けられたので、おそらく編集・校正漏れなのだと思います。

と、こんな感じで気になる部分がいくつかあったのですが、前作はあまりこういう違和感は感じなかったのですよね。

なので、もしかしたら出版を急ぎすぎたのでは?という印象を受けました。

こんな大作を6ヶ月で仕上げるって結構な無理を強いる作業だと思うのですが、どうでしょう。次作は発売日が伸びてもいいから、時間をかけて執筆・編集することを優先しても良い気がします。

世界観やこの世界の歴史、ドラゴンたちの話などはとても面白くてもっと知りたくなる魅力があるだけに…!

またドラゴンの名前や地名などにスコットランド・ゲール語を使っているのにも関わらず、作者があまりにもその言語に対し知識がなさそうなのが問題となりました。

それを受けて、ちゃんと然るべき先生を雇って勉強すると公言があったそうですが、そういった事態を避けられるよう出版社のサポートや確認が事前になかったのが不思議なくらい。

スコットランドやアイルランドの歴史もコロニアリズムや抑圧により言語禁止令などがあり、その結果スコットランド・ゲール語などは話者人口が本当にわずかとなってしまったという経緯がありますから。英語話者である作者(とその出版社)がそこに敬意を払えるかどうかは重要な課題なのだと思います。

そんなこんなで、シリーズ完走はどうしようかなと迷い中です。

他の読者さんたちの今後の予想考察を見て(読んで)いると、私が見落としていた小さな細部のヒントを面白くつなぎ合わせて予想を立てていたり、とても興味深いんですよ。

そんな様々な考察が本当なのかどうなのか私も確かめてみたい気持ちはある…

次回作は、とりあえず巷のレビューなどを確認してから読むかどうか決めてもいいかなと現時点では思っています。

Jan 11, 2024

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