読書感想:『The Chronicles of Narnia: The Horse and His Boy』

『銀のいす』を想像以上に楽しみ、スイスイと進んだのでもう一冊8月中に読むことができました。

『ナルニア国ものがたり』シリーズの5作目(出版順)となる、『馬と少年』。

 
 

『銀のいす』に引き続き、こちらも順調に読み進めました。

私は基本、音楽も映画も好きなものは繰り返し楽しみたいタイプ。

子供の頃に好きだった小説をいまだに読み返すことも珍しくありません。

だから、映画で観たことのある小説でも問題なく楽しめるだろうと思っていました。

もちろんそれは間違いではなかったですが、やはり「先のわからない新しい話」への引き込まれ具合は比じゃないようです。

当たり前のことなんだろうけれども。

映画化されている最初の3作よりも、4・5作目を読んでいる時の方が段違いでワクワクするという経験をして、改めてそのことを実感しました。

今回の作品はこれまでとは違い、主要キャラクターたちは「私たちが住む世界」の住人ではなく、もともとナルニアがある世界に住んでいます。

日本語題名は「馬と少年」ですが、英語の原題は「The Horse and His Boy」。

例えばペットや家畜など、人が所有しているような動物のことを指すときは

「a boy and his dog」(少年と彼の犬)

という言い方をします。

対して今作の題名は、「The Horse and His Boy」、

「馬と彼の少年」となっています。

この場合、馬が少年を「所有」しているわけではありませんが、

主語が馬で主体となっているんですよね。

物語全体を通して、馬のキャラクターたちがキーとなっていることが題名からもわかります。

物語はナルニア国から少し離れた南方の国、カロールメンで始まります。

カロールメンとその地域に住む人々の描写を見る限りでは、中東の地域と、イスラム教あたりをイメージしているのかなぁと。

そしてとても平たい言い方をすると、アスランが治めるナルニアとその友好国が善、そうではないカロールメンは悪という印象を受ける描かれ方をしているので…

1950年代に出版されたものなので仕方がないといえば仕方がないのだと思うのですが、現代の価値観だとステレオタイプ的な描写の仕方に疑問を持つ人も多そうです。

アスランも、回を追うごとにキリストのメタファーというのが明確になっている気がしました。

もうこれらはね、歴史を学ぶと思って読むことにしました。

作者であるC・S・ルイス氏は1898年生まれ、没年1963だそうです。

その年代に生きた、キリスト教でアイルランド系イギリス人の考え方を垣間見る歴史的資料みたいなもの。

そうするとそれはそれで興味深い部分がありそうです。

今作の中で特に気になった部分が2つほどありまして。

そのうちの一つが、

「目には目を」的なお話の部分。

目には目を、歯には歯を、

といえばハンムラビ法典ですが、旧約聖書にもそのような記述があるとかないとか。

旧約聖書と新約聖書の違い、どの宗教・宗派がどちらを正典としているのかなど全く知識がないのですが…

キリスト教って基本、

「イエス様を信じている者が犯した罪は、イエス様が犠牲となり既に全て償っているので、天国へ行ける」

というような教えだったような。

なのでそれとはまた違う、

「目には目を 歯には歯を」

という相手に与えた苦痛と同じだけの苦痛を自分でも受けなさい、という描写が印象に残りました。

キリスト教でもそういう考え方があるんですね。

神は公正である

みたいな話なんでしょうか。

もう一つは、

訳あって生まれた土地から逃げてきた主人公たち。

残してきた人のことなどが気になって、アスランに尋ねる場面があります。

その時に、アスランが

「それは彼女の話だ。君には君の話しかしない。」

というような意味合いのことを言うんです。

その真意が私には理解しきれず、ちょっと気になっています。

自分の行いが、周りの人にどのような影響をもたらしたのか気になるのって当然のことではなかろうか。

自分の言動で他人の人生に影響が出るならなおのこと。

それを知りたいと思うのは悪いことではないと思うのですが。

これはどういう教えだったのか理解しきれずでした。


『馬と少年』は、第1作目『ライオンと魔女』より少し後のお話。

ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィのペベンシー家のきょうだい達がナルニアを治めている黄金時代。

脇役でペベンシー家のきょうだい達が登場するのが楽しい。

シリーズ通してなんですけど、スーザンって描かれ方がちょっと不憫な気がするのは私だけでしょうか。

類い稀な弓矢の才能を持っていて、かなりの美人らしいですが、いつも泣いてたり怒ってたり喚いてたり、「昔の作品に出てくる典型的な弱い女性」的な役目を負わされている気がします。

同じ女の子・女性でもルーシーは溌剌として戦いへも参加するくらいなんですけれど。

今作初登場の女の子アラビスも最初こそプライドが高そうなものの、利発で自分をしっかり持っていて魅力的に感じました。

もうちょっとスーザンの良いところにも焦点を当ててあげて〜〜。

『ライオンと魔女』で嫌われ役っぽかったエドマンドは、2・3作目ではだいぶ好感の持てるキャラに成長し、今作では本当に頼もしい王子となっておりました。

さまざまな経験を経て大きな変化を見せたエドマンドの成長は読んでいて面白かったです。

さて、今作で7作品中5作を読み終えました。

残りは2冊のみ!

噂ではさらに宗教メタファーが色濃くなっていくようですが、ここまできたら最後まで読んでしまおうと思います!

Sep 3, 2022

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