読書感想:『The Chronicles of Narnia: Prince Caspian』
6月2冊目の本は、『Prince Caspian』。
ナルニア国物語シリーズの2冊目、邦題だと『カスピアン王子のつのぶえ』。(お話の時系列で言うとシリーズ4冊目に当たるらしいのですが、私は出版順に読んでおりこちらは出版2冊目の作品。)
先月のシリーズ1作目からの続きです。
古い有名作品ですし映画化もされていますが、今回の投稿は作品に関するネタバレありです、と一応表記しておきますね。
こちらも以前一度読んだことがあるはずですが、かなり昔で全然覚えておりませんでした。
代わりに、映画の方は2度ほど観たことがあるので、そちらの記憶はそれなりに残っています。
映画と原作本にあまり違いが見られなかった前作と違い、こちらは映画との相違点が多かったように感じます。
原作がある映画やドラマは、原作との違いやその良し悪しがよく語られますが、私個人は
原作本が大事にしていること(モラルやモットーなど)を受け継ぎ、
舞台やキャラクターなど全体の雰囲気に原作のエッセンスを感じられる
ならば、必ずしも細かい点が一致する必要はないと思っている派。
限られた時間の中でお話を伝え、映像という視覚や音響効果を十分に使う、という本とは異なる表現方法だからこそ、変更する点が出ても不思議ではないと思っています。
今作品は、映画版もあれはあれでとても良かったと私は思います。
映画と違う点が多かった分、原作本も最初から最後まで興味深くて割と一気に読めました。
最後の方で思わずホロリとしてしまった!
まさかナルニアの2作目で泣くとは思わなかった…(ここ数年映画や本では非常に簡単に泣くようになりました。歳ですかねぇ。)
リーピチープという名のネズミの剣士が登場するんですけれども、
このリーピチープ、とても誇り高く勇敢なんです。
でもネズミだから、周りの体の大きな種族(人間も含む)からは揶揄われたり、その果敢さを買ってもらえないこともしばしば。
映画でも、全く悪気はない無邪気なルーシーに「かわいい!」と初対面で言われ、反論してましたものね。(その後ルーシーとはちゃんと分かり合えていたはず。)
リーピチープは自分と同じ「ひとの言葉を話す」ネズミたちを従えて、カスピアン王子と共にとても勇敢に戦うんです。
戦った相手はテルマール軍という人間の軍隊。
これってよく考えたらとてもすごいことではないですか?
自分よりも何倍も何十倍も体の大きな敵を前にしても怯まず突進していけるのは、本当に勇敢な者かはたまた相当な向こう見ずな者くらいですよね。
そしてその戦いでひどく負傷してしまうリーピチープ。
怪我はルーシーの万能薬で癒やされますが、切り落とされた尻尾は戻ってきませんでした。
そのことを気にするリーピチープに対し、アスランがなぜ尻尾が必要なのかと問います。
リーピチープは尻尾はネズミにとって誇りと栄光であると説明しますが、アスランは「誇りや名誉にこだわりすぎてはいないか」というようなことを指摘します。
そこで、リーピチープが言うんです。
体の小さいネズミだからこそ尊厳や名誉を守らなければ、体の大きさで価値を決める者達からからかいのダシにされる、と。
ここで思わず泣いてしまいました。
2月に読んだ本の時もそうだったんですが、どうやら私は体の小さな種族にものすごく共感したり感情移入する傾向があるようです。
私は細くはないですし華奢でもないので、小さいのは背丈だけなんですが(150センチ)、人生の中で身長について他人から何か言われたことは何度もあります。
あからさまな酷い言葉とかは幸いにもまだないんですが、揶揄われることは結構良くある。
特にカナダに住んでいると、自分よりだいぶ背の高い人たちに囲まれる状況が良くあるんです。
加えて私はアジア人だし英語も第一言語ではない、となると、
子供扱いされないようにしっかりコミュニケーションが取れるようにしなければ、
と無意識のうちに防衛意識が上がっているのかもしれない。
とはいえ、日本に住んでいる時も(むしろ当時の方がもっと)身長のことを言われることはよくありました。
わざわざ隣に来て並び、「やっぱり低いね」とだけ言われたこともある。
特に思春期は自分の見た目や他人との違いに関して敏感だったのもあり自己防衛に必死で、他の身長の人に対して私自身の配慮が欠けていた部分もあったと思います。そこは大人になって反省しています。
自分の身長だって自分のアイデンティティの一つなのだと思ってはいても、
何度も何度も揶揄われたらやはり不快にもなるし自尊心を削られることもある。
それは自分で認識していた以上にもしかしたら重いものだったのかもしれないと最近思います。
だからこそリーピチープの台詞が刺さってしまいました。
そしてその直後、リーピチープが率いていたネズミたちがまた言うんです。
「我らの族長がその名誉を保持することを許されないのであれば、自分達も尻尾を切り落とす覚悟です。」
と言うようなことを。
なにこのかっこいいネズミ達。
最終的には、リーピチープがこだわっていた名誉のためではなく、仲間の絆と忠誠心によってアスランも絆され、リーピチープはまた尻尾を授けてもらったのでした。
アスランって自然そのものの象徴、というような受け取り方でいいのかな。
優しさや生命力、安心感をもたらす存在。同時に非常に恐ろしい、というような描写がいくつか出てくると思うんです。
ただ優しく甘やかすのではない、厳しさもあるキャラクターですよね。
児童書だから書き方はぼかしてあるけど、自然の在り方に争ったり他の種族に寛容さを見せない相手には、割と容赦しないイメージ。
児童書ってわかりやすいキャラクターが多い気がするけど、アスランは相手によって抱く感情が異なるであろう、とても興味深いキャラクターだなぁと思います。
もう一つ印象的だったのは、9章「ルーシーが見たもの」に登場する一節。
みんなと野宿する中、一人だけ寝付けなかったルーシーが夜空を見上げるシーン。
星座を見ながらうとうとするどころか、より目が冴えてきてしまうルーシー。
少し変わった夜特有のどこか幻想的な覚醒状態、みたいな表現があるんですがそこがとても綺麗だった。
あるある、そういうのあるよね。
現実世界では夜出歩くのは色々怖いし避けるんだけれど、
安心できる場所から星空を眺めることができた時の、あの特別な感じ。
眠くなるどころか昼間とは何か違う高揚感と非日常感。
そんな感じを思い出して、とても好きな文章でした。
7月も引き続きナルニア国シリーズを読んでいこうと思います。
3作目は映画もとても面白く好きだったので楽しみ。
Jul 2, 2022