読書感想:『Dragons of Autumn Twilight』

まずは1月から読んでおり、2月初旬に読み終えたこの本から。

『Dragons of Autumn Twilight』

Margaret Weis & Tracy Hickman作。

 
 

前回、エンターテイメント性が高い作品と書いたのですが、その通りでした。

そもそも私は探偵小説やファンタジーといった大衆文学ばかり読んでおり、そういったものは総じてエンターテイメント性が高いというか、娯楽目的に読むものが多いですよね。

この本は最初から最後までイベント続き!

1冊の中でこれでもかというほどいろんなことが起こります。

登場するメインキャラクターが多く、最初のうちはこの人誰だっけみたいなこともありましたが、基本全員一緒に行動するので話があちらこちらにジャンプすることはほとんどなく、追いやすかったです。

最後の方になったらハッとする場面とか、染み込む言葉だとかもやはりありました。

このお話の世界にはkenderという種族が存在します。

このケンダーたちは小人というのでしょうか、人間種族よりも小さい種族だと描かれています。そして恐怖心というものがない反面、好奇心が強くそのためどこへ行っても厄介ごとに巻き込まれる(意図せず引き起こしてしまうことも多々)という性質を持っているのだとか。

ケンダーであるTasslehoff(愛称 Tas)はメインキャラクターのうちの一人。

そのTasがとある場面で父親から言われた言葉を振り返ります。

昔、人間のように大きくなりたかったTasはなぜケンダーは小さいのか尋ねました。

するとTasのお父さんはこう答えます。

「ケンダーが小さいのは、小さなことを成すためだ。大きな存在だって、よく見たら小さいものたちが繋がりあって成り立っている。小さなことこそが大きな変化をもたらすのだ。」

と。

そしてその言葉を反芻しながらこう決めます。

「大きなことは他の仲間に任せて、自分は小さなことをする。たとえそれが一見、大事なことに見えなくとも。」

この一連の台詞は、私にとって最も印象深かった場面となりました。

自分が背が低いというのもあって、Tasになんとなく自己投影していたのかもしれません。

私はTasのように怖いもの知らずじゃないし賑やかで快活な性格でもないけれど、戦士でも魔術師でもないTasは一般人にとって共感しやすい立ち位置なのかもしれないですね。

それに、体の大きさの話だけではなく、自分の存在がちっぽけで非力に感じたことのある人はきっとたくさんいるはず。

そんな心の繊細な部分にじんわり染み込んでくる場面でした。

もう一つ心に残ったのは、エピローグの部分。

これまた主要キャラの一人であるGoldmoonの言葉です。

「これは新しいものの始まりであって、今までと同じものの続きではない。もう過去に縛られたりしない。」

というような台詞で、自分達の造るこれからの未来へ向けて前進する様子が描かれます。

これって今の私たちの世界に通じるものがあるのではないかな。

コロナ禍が始まって以来、「早く元の生活に戻りたいね」「一刻も早く元の通常を」みたいなことを言ったり聞いたりしませんか?

私も言ったことがあるし、頻繁に見聞きする言葉でもあります。

でもそれで本当にいいんだろうか?

もちろん、ウイルスに命や生活が脅かされる日々は早く終わってほしい。

みんなが会いたい人に気軽に会える世の中になってほしい。

というのは大前提の話ですけど。

元の「通常」だって悪いところ、改善できるところはたくさん含んでいたはず。

たとえば、コロナ禍をきっかけにいろんなことがオンラインで行われるようになりましたね。

お仕事の会議もそうですが、他にもいろんなイベントがZoomなどを通してバーチャルで開催され、学校の授業もオンラインで受けられるようになったり。

「コロナ禍になって、オンラインイベントが増えたことにより自分は今までで一番社交的な生活が送れた。あなた方のいう『普通の生活』は私にとっては、行きたいイベントへもなかなか参加できず、人にも気軽に会えなかった生活だ。」

というような内容を投稿されていた車椅子の方のお話を読んで、私は頭を殴られたような気がしました。

恥ずかしながら、今までそこまで考えが及んだことがありませんでした。

(会場の形態やそこにたどり着くまでの方法などさまざまな理由で)車椅子で参加できない・参加しにくいイベントは多数あるでしょう。耳が不自由な人はセミナーなどにも参加できないということも多々あったはず。

オンラインでの開催となれば、物理的に赴くことが困難な人でも参加できる。

Zoomなどは字幕機能もありますから聴覚が不自由な方でも参加できる。

それは学校の授業も同じことだったようです。

今まで、なんらかの事情・理由でキャンパスへ赴くことが難しかった学生たちが、オンライン受講を希望したものの、学校側から「うちにはそのようなリソースはないから」等の理由で断られてきた。

それがコロナ禍になった事で急速にオンライン授業の導入が進んだ。

このような変化でさえ、バッサリ切り捨てて「元の生活」に戻るんでしょうか?

Goldmoonの言葉は、そんな風に考えていた私に寄り添ってくれる言葉でした。

そう、今までと同じものの続きじゃなくていい。

元の通常じゃなく、より良い新しい未来を作っていけばいい、と。

そんなことを考えながら、本を読み終えました。

この本はシリーズものの第一弾。

一応、一区切りつき納得する形で終わりを迎えますが、回収されていない伏線がまだたくさんあります。

きっと続編でその辺りは説明があるんでしょう。

確か後3冊あったはずなので…続きはどうしようかな〜。

とりあえずはここで一旦終了にして、他のものを読もうかなと思っています。

それでも続きが気になる気持ちが消えないなら、シリーズを全部読むのもありかもしれません。

Mar 3, 2022

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